じゅくせんのつぶやき2

個人塾を経営しています。読書のこと、日常のことをつぶやきます。

五木寛之「青年は荒野をめざす」

☆ 9月も半ばを過ぎると私学では受験生や保護者向けの学校説明会が盛んになる。それに伴って、塾でも進路相談が増えてくる。

☆ 昨今は私学ブームだが、授業料実質無料化との宣伝文句とは裏腹に、私学は授業料以外の負担が結構多い。それに、便乗しているわけではないだろうが、値上げをしたり、計画しているところも多いと聞く。

☆ 京都府では公立高校入試が大きく変わり、来年度は巻き返しになるかどうかの正念場だ。

 

★ さて今日は、五木寛之さんの「青年は荒野をめざす」(文春文庫)を読み終えた。

★ 1960年代、ジャズトランぺッターを目指す20歳の青年・ジュンが、自分が求める音楽をさがして旅に出る。それは彼の成長の旅でもあった。

★ まずはバイカル号で、横浜港からシベリア、ナホトカへ。そこからアエロフロート機でモスクワへ。ヘルシンキ、ストックホルム、コペンハーゲンと北欧を経てパリへ。

★ その後、スペインを経由し、ポルトガルからアメリカ、ニューヨークに渡る。

★ 行く先々で、新たな人との出会いがあり、青年の世界が大きく広がっていく。

 

☆ 私は、特にパリ以降が良かった。しかし、読み終わって改めて最初を振り返ると、それはそれで面白い。

☆ 小説の最初と最後で、青年は大きく成長している気がする。

☆ 行く先々で街並みやらその国の空気を感じることができる。ロードノベルの醍醐味だ。もちろん男女関係を中心に、人と人のぶつかり合いが面白かった。

 

☆ リスボンの街でファドの旋律を聞きながら、ジュンが心の中でつぶやいた、「おれたちの日本は、いったいどういう時期にあたるのだろうー」というのが印象に残った。

 

 

 

向田邦子「大根の月」

☆ 今年は残暑が少なかった反動か長雨が続く。日暮れが早まり、昼間もどんよりと日差しが少なく、幸せホルモンと言われるセロトニンの分泌が不足気味。

☆ 気分も鬱になる。

 

★ さて今日は、向田邦子さんの「思い出のトランプ」(新潮文庫)から「大根の月」を読んだ。

★ ある女性の話。彼女は結婚して家庭に入る。夫は幼い頃父親を亡くした苦労人。母親が保険の外交員をして彼を育て上げたという。

★ 家を買うと同時に、その姑と同居することに。

★ 嫁姑の諍いはいつものことだが、それなりにやり過ごし、男の子に恵まれ、今、第二子がお腹にいる。

★ そんな日、事故が起こった。彼女が大切にし研ぎ上げた包丁でハムを切っているとき、ふざけた息子の指を切ってしまったのだ。

★ この出来事を機に、嫁姑の関係はこじれ、夫との関係も冷えてしまった。事故とは言え傷つけてしまった息子は、自分より姑になつくようになった気がする。

★ 彼女は遂に別居した。離婚も決意したある日、夫が訪ねてくる。戻ってくれないかと頼むのだが・・・。

 

☆ 短いけれど、スリリングな作品だった。「大根の月」、昼に出る月。

☆ 善かれ悪しかれ、昭和を感じる作品だった。

 

 

 

奥田英朗「無理」

☆ 物価対策として京都市民には1人5000円相当の「京都ポイント」が給付されるとか。某国の大統領は中間選挙で自らが率いる政党が勝利すれば1人5000ドルを配当として給付するとか。

☆ 同じ5000でも、円とドルでは2桁違う。違うとはいえ「給付」というのは、最近大流行だ。生活困窮者への給付というのは緊急措置としてわからなくはないが、一律給付するなら、そもそも課税しなければよいのに。

☆ まして、選挙買収まがいのバラまきはどうなのか。

 

★ さて今日は、奥田英朗さんの「無理」(文春文庫)を読み終えた。

★ 新たに合併によって生まれた「ゆめの市」。美しい名前とは裏腹に、旧態依然の土建政治が行われ、そこに住む人々も様々な問題を抱えている。

★ 本作では、特に5人の人物を中心に物語が進む。どこで道を間違ったのか、彼らの生活は破綻に向けてまっしぐらに進む。

★ すべてのエピソードが最後のクラッシュで悪の大団円となる。

 

☆ 簡単にまとめるとこんな感じだけれど、上下2巻の物語は、それぞれの人物が深みにはまっていく様子が面白く描かれていた。

 

 

無理

無理

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角田光代「律儀な桜」

☆ 昨夜は、ドラマ「Tシャツが乾くまで」最終回を観た。大掛かりな仕掛けはないけれど(失踪癖や4度の離婚歴にはびっくりした)、脚本と演出、役者の演技で魅せられた。

☆ 意味深なエンディングも余韻を残した。

 

★ さて今日は、昨日に続き、検定教科書つながりで、光村図書の中学3年生国語から角田光代さんの「律儀な桜」を読んだ。

★ 取材で震災後の東北を訪れた際、悲惨な状況の中でも咲き誇る桜を見たという。

★ 角田さんはこの時の風景と昨年、鹿児島を訪れたときのタクシー運転手の独り言のような「桜は律儀に咲くもんだね」という言葉を結びつける。

★ 何があっても変わらないものに思いを馳せる。「変わり続けるしかない私たちの暮らしに、そんなに変わらないものがあるということは、時に私たちを救うのではないか」と。

 

☆ ずっと昔に読んだ、小林秀雄さんの「無常という事」が浮かんできた。

☆ 「現代人には、鎌倉時代の何処かのなま女房ほどにも、無常という事がわかっていない。常なるものを見失ったからである」だったか。

 

 

 

 

 

さくらももこ「二十歳になった日」

☆ 季節の変わり目は寒暖の差が大きい。そのせいか身体がなんとなく怠い。

☆ 暑ければ暑いで、寒ければ寒いで、そして季節の変わり目はそれなりに、どこか体調が悪い。年中行事のようなものだが、やはり老いを感じる。

☆ 毎日接する天真爛漫な塾生たちがうらやましい。

 

★ さて今日は、光村図書、中学1年生の国語教科書から、さくらももこさんの「二十歳になった日」を読んだ。随筆。

★ 当時28歳のさくらさんが、二十歳の誕生日を回想した作品。

★ その日、さくらさんは住んでいた静岡市内の道をまっすぐに歩いたという。「ひとりで決断し、ひとりで人生を切り開いてゆかなければならない」と決意して。

★ 歩いている途中、公園のベンチで休み、新緑の風を感じながら充実感を感じている。「生きているだけでよかった。そう考えるのではなく感じていた」というところが印象的だ。

★ まるちゃんが二十歳になった時を思い浮かべながら読んだ。

 

☆ 中学1年生の教科書だから、この作品を読むのは13歳ぐらいの子どもたちだ。彼らにとって二十歳というのは、まだまだ遠い先の話だろうなぁ。

☆ 私も学生時代は時間を持て余していた。今から思えば、時がゆっくり流れていたような気がする。

☆ それがどうだろう。この年になると1日が飛ぶように過ぎていく。気がつけば、20年、30年、40年、50年と過ぎてしまった。

☆ 光陰矢の如しを実感する。

 

 

 

星野智幸「人間バンク」

☆ 町内の古紙回収日。家の前に出される古紙の少なさに、新聞業界の斜陽を感じる。

☆ 買い物に出かけると、なぜか目に付く「中道」のポスター。今となっては、虚しい遺産。「中道」という政党は、政党助成金で借金を返すまで、一人が形だけ残るとか。

☆ 記者会見を見ていても、倒産企業の言い訳のようで、短期間とはいえ、こうした政党が野党第一党だったのかと思うと情けなくもある。

 

★ さて今日は、星野智幸さんの「焔」(新潮文庫)から「人間バンク」を読んだ。「人材バング」ではなく「人間バンク」。金本位制ではなく、人本位制の社会を描いている。

★ 金銭感覚が欠如しているせいか、住む家もなく古校舎のようなシェルターで暮らしている男。彼は「人間バンク」を訪れ、無利子無担保で「100万人円」の融資を受ける。

★ 1人円=1円というシステムらしい。

★ 男はある事業で成功し借金を返した、貯蓄もできた。ますます事業を拡大しようとすると「人間バンク」から所有財産が100万人円を超えると、強制的に「一人貨」と交換になるといい、一人の男を連れてきた。

 

☆ 学生時代、マルクスの「資本論」を部分的に読んだが、どんな内容だったかな。

☆ 価値には、使用価値と交換価値がありとか、その価値を産み出すのが労働で、労働にも二面性があるとか。労働者は、自らの労働力を資本家に売ってその代わり賃金を得るとか、資本家は労働者が生み出した剰余価値を搾取しているとか、そんな内容だったかな。

☆ 貨幣というのも(価値の)交換の仲立ちとして生まれたとか、最初は貴金属だったとか、やがては道具であった貨幣が人間社会を支配するとか、そんな理論だったかな。

☆ 先日、ハラリ氏の「ホモ・デウス」を斜め読みしていたら、将来は(すでに今でも)多くの労働がAIやロボットによって担われ、「無産階級」ではなく「無用階級」が増えるといったディストピアが描かれていた。

☆ そうした社会では、もはや階級闘争も成り立たないので、革命も起こらないとか。

☆ 一部の超富裕層(不死を目指すとか)と大多数の無用階級。人類はその道を歩んでいるような気がする。

 

 

 

 

 

池澤夏樹「レシタションのはじまり」

☆ 大雨警報が発令されたので、近隣の小中学校は臨時休校になった。

☆ 長雨は渇水の帳尻合わせなのか。梅雨の末期のような豪雨が続く。

 

★ さて今日は、池澤夏樹さんの「きみのためのバラ」(新潮文庫)から「レシタションのはじまり」を読んだ。

★ レシタションというのは、マントラや呪文のようなものだろうか。

★ かつて南米に、激情を抑えられず妻を殺した男がいた。その妻というのが有力者の娘だったため、捕まればただでは済まない。男は逃れるためにアマゾン川を奥地へとさかのぼった。そこには、決して争わず、それゆえ貧しく生きる「逃げる人々」が住んでいるという。

★ 男は彼らを探し求めるが会うことができない。足を滑らせて崖下に落下してしまう。

★ 九死に一生を得た彼は、「逃げる人々」に救われ、そこで「ンクンレ」というレシタションを教わる。その言葉を唱えると、心が静まっていくという。

 

☆ ホモ・サピエンスの歴史が始まって以来、争いが途絶えたことはない。

☆ 今週、英字新聞をお試し購読しているが、紙面の多くは世界のどこかで起こっている争いを伝えている。

☆ ホモ・サピエンスは共存のための進化を実現できるのか、それとも弱肉強食の野獣に退化するのか。もし退化するなら、AIに駆逐される日が遠くないかもしれない。